2025年6月28日~7月30日に、イマチニブ(先発品グリベック錠および後発品)に関する患者アンケート(回答数:183件)を実施しました。
このアンケートは、NPO法人GISTERSが独自に行ったもので、GIST患者さんの服薬期間、薬の変更理由、副作用とその影響、そして副作用への対処方法について実例を集めたものです。
イマチニブ(グリベック錠または後発品のイマチニブ錠)をどのくらいの期間、服用していますか?もしくは服用しましたか?
• 服用開始から3年以内の患者が全体の約45%
→ 新規〜中期層が厚く、制度変更や副作用の影響を受けやすい層と考えられます。
• 「10年以上」服用している長期層も25名(約14%)
→ 長期的な副作用や継続支援の必要性も示唆されます。
• 「8〜10年」の層は少数
→ 治療導入のタイミングや調査対象の特性が影響している可能性があります。安定期間も
長くなり、ほぼ通常の生活に戻っておられる方も多いと思われます。
現在の状況、もしくはイマチニブ(グリベック錠または後発品のイマチニブ錠)を服用していた時の状況を教えてください
|
服用パターン |
回答者数 |
割合 |
|
① 先発品 → 変更なし |
53人 |
約29% |
|
② 後発品 → 変更なし |
51人 |
約28% |
|
③ 先発品 → 後発品へ変更 |
69人 |
約38% ← 最多 |
|
④ 後発品 → 先発品へ変更 |
1 |
約0.5% |
|
⑤ 先発品 → 後発品 → 先発品 |
7 |
約3.8% |
|
⑥ 後発品 → 先発品 → 後発品 |
0 |
0.0% |
|
⑦ その他 |
2 |
約1.1% |
あなたの服用している、もしくは服用していたイマチニブ(グリベック錠または後発品のイマチニブ錠)はどれですか?
(※最初からお薬の変更なく服用されている方の回答です)
Q3の結果からは、先発薬を選び続ける患者には「薬への信頼」「医師の判断」「副作用への耐性」などが背景にあり、制度変更の影響を受けにくい層が存在する可能性も示されています。
一方で、後発薬から服薬を始める患者も増えており、コストや制度面を重視する選択が広がっていることが分かります。
Q6.
あなたが変更後最終的に服用している、もしくは変更後最終的に服用していたイマチニブ錠はどれですか?
(※グリベック錠からイマチニブ錠へ変更された方のみの回答です)
Q6の結果からは、今後さらに多くの患者が先発品から後発品へ切り替えていく可能性が示されています。一方で、患者さんの中には特定のメーカーを指定して服用を希望する方もおられ、その理由が経済的なものか、副作用への対応なのかは明確ではありません。また、各社の原材料や副作用に関する情報が患者さん同士で共有されている状況も見られ、今後はより大規模な調査によって実態を把握する必要があるかもしれません。
Q7.
お薬をグリベック錠から、イマチニブ錠へ変更した理由を教えてください
Q7の「その他」を選んだ方の自由記述内容(N=15)をまとめると以下の通りです
治療薬としての保険適応(GIST適応)追加や、術後・治療経過の「区切り(例:3年経過)」によって変更したケースです。
「後発品の方が安価だから」「保険制度への配慮」といった、経済的負担・支払いの観点から後発品に変更したケースです。
病院や市(行政)の方針、院内処方・制度変更、保険の指導、国(厚労省)の影響など、医療機関や制度側の方針で切り替えを促された/仕方なく従ったケースです。
「主治医が特に問題ないと言った」「薬剤師の誤り」といった、医療従事者の発言やミスがきっかけとなったケースです。
自由記述では、単に患者自身の強い希望だけでなく、
特に、病院や保険など“医療現場の都合・方針”によるものが多く、さらに経済性も大きな動機となっていることが分かります。また、「3年経過」での切り替えや「適応追加」といった制度的な転機が契機となるパターンも目立ちました。
Q8.
お薬をイマチニブ錠から、グリベック錠へ変更した理由を教えてください
Q3とQ6そして最終的にグリベックへ変更された方(Q8)を合計した、今回ご回答いただいた皆様の服用状況は以下の通りです。
グリベック錠とイマチニブ錠5社の副作用の発現上位5つを一覧にしました。(参考資料)
グリベック(ノバルティス) n=59
浮腫: 46人(約78.0%)
疲労感: 35人(約59.3%)
下痢: 29人(約49.2%)
筋肉の痙攣: 28人(約47.5%)
嘔気・嘔吐: 24人(約40.7%)
高田製薬(ヤクルト) n=16
発疹・かゆみ: 13人(約81.3%)
疲労感: 11人(約68.8%)
筋骨格・関節痛: 8人(50.0%)
浮腫: 5人(31.3%)
頭痛: 4人(25.0%)
日本ジェネリック(JG) n=7
浮腫: 5人(71.4%)
嘔気・嘔吐: 5人(71.4%)
下痢: 4人(57.1%)
血球減少: 2人(28.6%)
検査異常: 2人(28.6%)
日本化薬(NK) n=33
浮腫: 27人(約81.8%)
筋肉の痙攣: 19人(約57.6%)
発疹・かゆみ: 19人(約57.6%)
血球減少: 17人(約51.5%)
疲労感: 12人(約36.4%)
大原薬品工業(オーハラ) n=23
浮腫: 18人(約78.3%)
筋肉の痙攣: 15人(約65.2%)
疲労感: 15人(約65.2%)
下痢: 13人(約56.5%)
脱毛: 10人(約43.5%)
DSEP(第一三共エスファ)n=9
浮腫: 6人(約66.7%)
疲労感: 6人(約66.7%)
下痢: 4人(約44.4%)
発疹・かゆみ: 2人(約22.2%)
l 共通点
どの会社でも、イマチニブに典型的な副作用(浮腫・疲労感・下痢・筋痙攣など)は高頻度で出ている
→ 「この会社だけ極端に違う」という印象ではないです。
l 違って見える点
会社によって「皮疹が多め」「脱毛が目立つ」などの“傾向のようなもの”は、記述上は見える
→ ただし、サンプル数・背景の違い・偶然のばらつきで説明できてしまうレベルです。
l 結論として
「●●社は危ない/▲▲社は安心」といったレベルで会社差を語れるデータではありません
→ 「こういう傾向が“あるかもしれない”ので、もし気になる症状が強く出るようなら、主治医・薬剤師と『メーカー変更』も含めて相談する」くらいの参考情報としていただくのが適切です。
Q13.
お薬をグリベック錠からイマチニブ錠に変更された方へお聞きします。副作用は以前と比べてどうなりましたか?
Q13「その他」回答の自由記述は以下の4件です:
一般的な理解として、先発品(グリベック)と後発品(ジェネリック)のイマチニブは、有効成分・用量が同じであり、規制上も生物学的同等性(AUC・Cmaxが80〜125%の範囲に収まること)が確認されているため、有効性や副作用プロファイルはおおむね同等と考えられています。ただし、患者ごとの体感差や使用感の違いが報告されることがあります。
• 有効成分・用量は同一
先発品グリベックと後発品イマチニブ錠は、いずれも有効成分「イマチニブメシル酸塩」を含み、用量設計も同じです。
• 規制上の承認要件
厚生労働省・PMDAのガイドラインでは、後発医薬品は先発品と比較して血中濃度(AUC・Cmax)の90%信頼区間が80〜125%に収まることが求められます。この基準を満たすことで「生物学的同等性」が確認され、理論上は有効性・安全性が同等とされます。
• 臨床的な理解
海外・国内の研究報告では、集団全体を対象とした解析では有害事象の頻度や種類に大きな差は認められないことが多いとされています。
• 患者レベルでの差
一方で、添加物や製剤設計の違い、錠剤の溶け方や飲み心地などによって「合う/合わない」と感じる差が存在します。実際に「後発品に切り替えて副作用が強まった」「逆に軽くなった」といった体感の違いが報告され、切り替え後に先発品へ戻した例も一定数あります。
• 代表的な副作用
浮腫、筋肉痛・こむら返り、悪心・下痢、発疹、疲労感、血球減少などは先発品・後発品ともに共通して報告される副作用であり、大きな差はないと考えられています。ただし、患者ごとの許容度や感じ方には差があると理解されています。
出典元リンク
• 厚生労働省:後発医薬品の使用促進について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/kouhatu-iyaku/index.html
• PMDA(医薬品医療機器総合機構):後発医薬品の生物学的同等性試験ガイドライン
https://www.pmda.go.jp/files/000234565.pdf
• 厚生労働省:ジェネリック医薬品に関するQ&A
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000078998_3.pdf
• RSC Publishing:Glivec to generic imatinib switch
https://pubs.rsc.org/en/content/articlehtml/2025/pm/d5pm00099h
• Blood(ASH):Evaluating Real-World Effectiveness and Safety of Generic and Brand-Name Imatinib
https://ashpublications.org/blood/article/138/Supplement%201/3614/479735/Evaluating-Real-World-Effectiveness-and-Safety-of
Q15.
現在、発現している(感じられる)副作用は何ですか?副作用がない方は「副作用は特にない」を選択してください
1.まずは出現頻度の高い項目を確認すると、注目すべき点や注意喚起の「主役」が見えてきます。
2.個々の項目だけでなく、どの臓器・領域に負担が出やすいか「症状のまとまり」を見ると全体像が掴みやすくなります。
消化器症状のクラスター
血液・検査値の異常
神経・筋症状
生活の質に影響しやすい外見・感覚の変化
「その他」:13.7%(25/183)
Q15「その他」の25件をまとめると、主な内容は次の通りです。
皮膚・粘膜の症状が最多
皮膚の乾燥、カサカサ、黒ずみ・色素沈着、肌や爪の変質、指のあかぎれ、乾燥肌、皮膚が弱くなり出血しやすい、 などが多く、喉・鼻・口・目の乾燥、涙目も複数挙がっていました。
血液・検査値・代謝の異常
LDHや血球減少などの血液検査異常、糖尿病・低カリウム、白血球増加、二次性副腎皮質機能低下症など、検査値や内分泌・代謝の異常が具体的に記載されていました。
むくみ・循環器・全身症状など
足のむくみ、手足症候群、動悸、血圧不安定、冷え、頭がぼんやりする、尿量減少、睡眠障害など、生活の質に影響する症状も見られました。
重篤な可能性のある事象
イマチニブ関連が疑われる心筋炎、新規発現の膀胱がん、死亡例なども自由記述として報告されています。
全体として、「その他」には、選択肢にない皮膚・乾燥症状や検査異常、重めの合併症まで幅広く含まれていました。
Q16.
現在の副作用は生活にどの程度影響していますか?
(1) 「完全に問題なし」は少数派
「影響はなく、普段通り」:約6.7%
→ 本当に“まったく支障なし”と言える人は非常に少数です。
(2) 「生活は維持できているが、何かしら気になる」層が最多
「気になることはあるが、普段の活動に支障はない」:約半数(約51%)
→ 多くの患者は治療や症状の影響を何らかのかたちで自覚していますが、日常生活は何とか維持できている状態と言えます。
(3) 活動に支障が出ている層も4割強
「活動に支障がある」側の3カテゴリーをまとめると:
→ 合計76名/183名 ≒ 41.5%
つまり、約4割の患者は、仕事・家事・趣味など、何らかの活動に支障を感じていると読めます。
(4) 重症度の高い層は少数ですが無視できない
「多くの活動に支障」+「ほとんどの活動が制限」
→ 13名/180名 ≒ 約7%
人数としては少ないものの、生活がかなり制限されている患者が一定数おられ、支援や介入の優先度が高い層と考えられます。
📋 副作用とQOLへの影響(ポイント整理)
• 大多数の患者は副作用は「自覚しているが、生活は何とか維持できている」状態
• 約4割の患者は副作用により生活に支障が出ており、活動に制限が生じている
• 少数だが副作用の影響が強く、日常生活がかなり困難になるレベルの患者が存在する
つまりこの結果が示唆するものは・・・
単に「副作用の有無」だけでなく、QOL(生活の質)への影響度合いを考慮する必要があり、支援や治療の調整が必要な患者さんが相当数存在することを示しているとまとめられます。
