🌟TAS-116(ピミテスピブ)の迅速審査を求め、要望書を提出しました。

令和3年4月15日
大鵬薬品工業株式会社が開発中のTAS-116(ピミテスピブ)について、迅速な審査と早期の承認を求める要望書(2回目)を厚生労働大臣、医薬・生活衛生局長、医薬品審査管理課長宛てに提出いたしました。
TAS-116(ピミテスピブ)は2月22日のニュースリリースで、GIST(消化管間質腫瘍)を対象とした第Ⅲ相臨床試験で無増悪生存期間を有意に延長したと発表されております。


🌟希少がんに対する新薬開発について要望書を提出しました

令和3年4月15日に、GISTERS単独で「TAS-116(ピミテスピブ)の迅速な審査を求める要望書」を提出しましたが、それに続き、5月27日、日本希少がん患者会ネットワーク:RCJとの連名で「希少がんの新薬開発に関する要望書」を提出しました。Facebookで掲載した関連記事をまとめてご紹介いたします。

【参考】

Rare cancers are not so rare: The rare cancer burden in Europe

http://www.cupfoundjo.org/wp-content/uploads/2014/01/Rare-cancers-are-not-so-rare-.pdf

第3期がん対策推進基本計画 中間評価に関する動向について

https://ganjoho.jp/data/med_pro/liaison_council/bukai/data/shiryo15/jizen_01.pdf

5月27日、厚労省を訪問し、厚労大臣、医薬担当審議官、生活衛生局長、医薬品審査管理課長へ宛て、希少がんの新薬開発に関する要望書をRCJとGISTERSの連名で提出させていただきました。

当日はコロナ禍の厳戒態勢の中、広い会議室をご用意いただきご対応いただいた事に感謝申し上げます。

新薬の開発については、試験的に導入されていた「先駆け審査指定制度」「条件付き早期承認制度」が法制化され、希少がんに適応する新薬開発には追い風となりました。ただ、すべての新薬がこれらの制度に乗れるわけではありませんので、治療成績や生存率が他の罹患者の多いがんに比べて劣っている希少がんの治療薬には、新設された制度から漏れたとしても、適切な基準で迅速に審査される体制が必要です。

今回はGISTの4次治療薬が承認申請を検討中という時期でもあり、この新薬がHSP90阻害剤として世界のオンコロジストが待ち望んだ臨床で使用できる唯一の薬剤(しかも経口)であること、GISTの場合、既存の治療と比較するのではなく、全てが無効になったからこそ必要な薬剤なのだということ、GIST患者は8年間、この薬を待ち望んでいたことなども合わせてお話しさせていただきました。

またこれはご回答は得られませんでしたが、新設された早期承認制度の指定要件についても、私見を述べさせていただきました。

毎回、指定を受ける薬剤は現状では4~5剤ですが、では指定された薬剤と指定から外れた薬剤の間には、どれほどの差があったのでしょう? 

治療したい、生きたい、新薬を待つ患者さん達のその思いはどの疾患でも同じはずで優劣などありません。5番目と6番目の差、それをどのような基準で判断したのか、基本的な事ですが。これはぜひきちんとご説明していただきたいと考えます。

希少がんに対する治療薬の開発は、製薬企業、医療者、患者、規制当局が協力しなければ進みません。赤字覚悟で開発を続けてくださる企業、治験の参加に関する患者の疑問、悩みに対して、電話での対応までしてくださる先生方、後に続く仲間のため、治療の未来のために治験に参加してくださった患者さん達がいます。あとは国としてどのように関わっていくべきか、希少がん対策として挙げられている「それぞれのがんの特性に合わせた対策」というものを、ぜひ実行していただきたいという思いです。

https://rarecancersjapan.org/2021/05/28/yobo/



🌟上記記事に対するコメント


長年効果が期待されつつも副作用との兼ね合いで薬として生まれることのできなかったHSP90阻害剤がこの日本から生まれようとしています。しかも経口で。

お薬の名前はピミテスピブ。治験中、私たちがTAS116と呼んでチャレンジしてきた薬です。

GISTに対する3番目の薬レゴラフェニブの承認から8年。レゴラフェニブに耐性を生じた日本の患者さんたちは果敢にフェーズⅠやFIHの治験に参加し、次の薬への足掛かりを作ろうとしてきました。

TAS116は8年かかってようやくⅢ相でいい結果が出たところまできました。

そしてTAS116のフェーズⅢの受け入れが終了した現在、待ったなしの患者さんがアクセスできるのは、別のフェーズⅠの薬というのが現状です。

その間海外で承認された第4番目の薬。ベンチャー発のこのお薬は日本での足がかりがなく治験の目途もたっていません。日本の患者さんが例えば患者申出療養制度を使って服用しようとしても1か月あたり575万円という薬代にはおいそれと手が出ません。

希少がんでは対象が固形がんという大きな括りでのフェーズ1に参加して足がかりを作らないとその先に進む可能性はありません。この8年にどれだけの患者さんがこうして道を切り開こうとしてきたことか。

近年のがんの治療の進捗は目覚ましいものですが、残念ながらGISTには免疫チェックポイント阻害剤の効果もなかなか見られず、パネル検査の結果から有効な変異が見つかり治療に進むこともままなりません。

私たち日本のGIST患者にとっては現在TAS116こそが最も期待できる薬です。

ここ日本で。私たちが参加し要望を上げ開発を進めてもらったこの薬が、世界のGIST患者に、そして他の癌種でも治療効果の期待できる薬に育つよう、そして今、私たちが当事者としてつなげなければならない待ったなしの患者さんに一刻も早く届くよう。

ぜひとも早期の承認をお願いいたします。

 

櫻井公恵

 NPO法人GISTERS 副理事長



5月27日、厚労省を訪問し、希少がんの新薬開発に関する要望書を日本希少がん患者会ネットワーク:RCJとNPO法人GISTERSの連名で提出しました。

希少がんは他の罹患者数の多いがんに比べ、1年後、3年後、5年後の生存率が、いずれも明らかに低い事が分かっています。患者数が少なく診療データが集まりにくい事と、そのせいで治療法の開発も進まない事が理由として考えられます。

ごく稀に希少がんに効果のある薬剤が偶然見つかることがありますが、ほとんどの場合、利益にならない薬剤の開発は行われず、お薬として世に出てくることはありません。

実はGISTの4次治療薬となるピミテスピブもそうなる寸前まで行ったお薬です。

このピミテスピブはHSP90阻害剤と呼ばれるもので、がんの治療薬としてはとてもユニークな薬剤です。これまでGISTで使われてきた分子標的治療薬は、腫瘍細胞内の増殖シグナル伝達を阻害することで抗腫瘍効果をあげてきました。この細胞内シグナル伝達に関わる多数の重要な分子と複合体を形成しているのがHSP90です。そしてただくっついているだけではなく、シグナル伝達分子が正常に働くために HSP90が大きく係わっている事が分かっています。ですので抗腫瘍薬としてのHSP90阻害剤は、ターゲットとなる分子に直接攻撃を仕掛けるのではなく、ターゲットの足元を不安定にして正常に働かせないという効果を狙った、とてもユニークな治療法、治療薬です。

初めてこの話を聞いたときにハッと思ったのは、HSP90阻害剤は間接攻撃、では直接攻撃とのコンビネーションで治療効果を上げることができないだろうか?という素朴な疑問です。

いつか誰かがこの答えを出してくれるのではないか、そう思いながら、いくつものHSP90阻害剤が開発されては消えていくのを見てきましたが、どれもあと一歩のところで臨床で使えるお薬にはなれません。半ば諦めかけていた時に飛び込んできたのが、TAS-116(ピミテスピブ)のphase2開始のニュースです。

それも日本の製薬企業が世界に先駆けて、しかも経口で。。

今のところ単剤で効果が得られることが分かっているのはGISTのみですが、今後様々ながんの治療法開発に貢献していくはずです。ぜひこの点にも着目していただきたいと思います。

そして治療薬が途切れて8年、次の治療法がなく待ったなしの状況となっている日本のGIST患者さん達のためにも、

一日も早く承認されなければならないお薬だと考えます。

 

西舘澄人

 NPO法人GISTERS 理事長