GIST患者セミナー2018in東京・築地 開催報告

平成30年6月23日(土)

GIST患者セミナー2018in東京・築地を開催いたしました。

準備が間に合わず、運営に関わってくださった皆様には本当にご苦労をおかけいたしましたが、167名のご参加をいただき、何とか無事に終える事が出来ました。
まずは国立がん研究センターの講師の先生方、お手伝いくださった先生方、スタッフの皆様、ご参加くださった皆様に心より御礼申し上げます。
ご講演の内容はかなり高度なお話も含まれていましたが、参加された皆さんも熱心にメモを取りながら聞き入っておられ、先生方の熱の入ったご講演と相まって会場は熱気にあふれていました。

 


 

東病院の内藤陽一先生からは開発中の新薬のお話を中心にご講演頂きました。GISTを抑えるためにどこをターゲットにしてお薬が作られているのか、国内、海外、それぞれ開発途上にあるお薬についてご解説いただき、またお薬が認可されるためには、国としてどのような基準を設けているのか、どのような結果が求められるのかについても分かりやすくお話していただきました。「GISTは完治はできないけれど、お薬を使って腫瘍を抑え、元気で長生きしましょう」視点を少し変えれば、がんでも元気に暮らす事ができる!!そんなメッセージに皆さんホッコりしましたね。

 

 

中央病院の本間義崇先生には、GITの基礎知識についてご講演いただきました。

非常に多岐に渡るGISTに対しての診断では、その難しさについてのお話から、様々なマーカーの組み合わせを調べる事で正確な診断ができるようになっている事、逆に言うと病理の先生の経験が少ないとその方法や見分け方で迷う事が多いという事も解りました。

治療についてはガイドラインに沿って順を追ってご解説下さいましたが、治験の結果のデータを数多く示していただき、それぞれのお薬についてどのような特徴があり、どのような経緯で承認されたのか、というところまでご解説下さいました。また、KITに変異のない特殊なGISTについても、その治療に関する研究が行われている事、希望を持って良いのだと学びました。

 

「GISTと分かっても挫折禁止」きちんと治療すればこんなに生きる事ができる。データからのメッセージには説得力がありました。

希少がんセンター長の川井章先生からは稀少がんの抱える問題、今後の課題についてのお話がありました。稀少がんの一つ一つは少数の症例しかありませんが、全てを合わせると5大がんのひとつにも匹敵する数となります。これは決して無視できる数ではありません。ただその中には190もの稀少がんが含まれていますので、実際に一つずつへの対応は難しく、診断を間違ってしまったり、治療がガイドラインから外れてしまう危険性を秘めています。そのような中で、希少がんセンターでは多施設共同での臨床試験や、ワーキンググループを開催して稀少がん一つ一つにも粘り強く対応して下さっています。そしてマスターキープロジェクトでは特異的な変異がある、なしに関わらず、患者さんと治験を結びつける取り組みが行われています。稀少ながんでも正しい治療を受ける事ができるよう、そして治療法がない場合も治験への道を開き、希望を繋げていけるようになりましたね。

では私達はどのように希少がんセンターを利用すれば良いのでしょうか、同じく希少がんセンターでホットライン等を担当されている看護師の加藤さんからお話頂きました。診断、治療についてどうも納得できない、セカンドオピニオンを受けたい、という方から、GISTについて何も分からないという方まで、とにかく希少がんセンターのホットラインへご相談頂きたいと思います。そうすれば必ず正しい治療のラインに乗ることができます。ご発表の中ではGIST患者さん特有の悩みが何なのかも分かり、今後解決しなければならない問題点も見えてきました。患者さんにとってとても頼りになる「希少がんセンター」。今後も患者会と協力しながらGIST患者さん、稀少がん患者さんへの情報提供を行っていきたいとの事で、会を運営する私達にとっても頼りになる存在です。

今回は開発中の薬と、それを患者さんとどのように結び付けていくかという取り組みの両方をご紹介していただきましたが、海外で開発されているものも含め、これからの新薬へどうアクセスしていけば良いのか、その道筋をどうすれば確実なものにできるのか、ある意味、危機感を持って取り組んでいかなくてはならないという点で私達にも課題は残ります。
皆さんの不安を煽るようなお話をしてしまったかもしれませんが、私達GIST患者はそのお薬に治療の大部分を依存しています。GISTを治す、完全に治癒させる、その方法が見つかるまで、私達はこの問題を常に念頭に置いて、活動していかなければならないと考えています。どうぞ引き続きのご協力を宜しくお願いいたします。

将来的な事ばかりではなく「患者さんの今」にも目を向けて「自分らしく生きるために」というのが、今回のサブタイトルでした。前回のセミナーで皆さんから寄せられた感想に目を通していた時、講演された患者さんにも質問したかったという意見があり、ふと思いついたのが今回の企画です。

患者さんが登壇されたトークセッションは実に素晴らしかったですね。参加された皆さんも、登壇された皆さんも、スタッフも先生方も、会場全体に勇気と希望が満ち溢れる温かな時間でした。涙を流しておられた方もちらほらといらっしゃいました。
私達の抱える問題は常に多様で、生活、家族、仕事にも大きな影響を与えています。参加された患者さんやご家族の悩みや苦悩を、三人の笑顔が見事に和らげてくれましたね。司会の櫻井さんもそんな雰囲気を大切にしながらの見事な進行ぶりでした。心の交流会、これからも続けて行きたいと思います。

ご講演くださった川井先生や、運営を支えてくださった西田先生からも、労いと称賛のご連絡をいただいております。GISTからのバトンを他の稀少がんにもつないでいきたい。
「GIST啓発の日」の日本開催とさせていただいた、今回の「GIST患者セミナー2018」にとっても、とてもありがたい、嬉しいお言葉でした。

 

 

平成30年6月23日

NPO法人GISTERS理事長 西舘澄人


「GIST患者セミナー2018東京・築地」の模様は動画配信される予定です。

今しばらくお待ちください。

 


GIST患者セミナー2017in東京 開催報告



GIST患者セミナー2017 in東京が平成2999日、国立がん研究センター築地キャンパス・国際研究交流会館にて開催されました。申し込み件数90件、計133名のGIST患者さんやご家族の皆さんが、東北や九州等、非常に広い範囲からご参加くださいました。

今回は国立がん研究センター・希少がんセンターとの共催セミナーという事で、まず最初に希少がんセンター看護師の加藤様より、センター長の川井章先生からのメッセージのご代読、並びに希少がんセンターのこれまでの取組みをお話し頂きましたが、私達患者の声を常に運営の中に活かし、増え続ける日々の相談にも真摯に向き合い、取り組んでくださっている状況が良く分かり、感謝の念を持って聞かせて頂きました。

 

開設以来の相談件数も1万を越えたそうです。これからも稀少がんの専門センターとして、患者さんが適切な治療の道へ進めるよう、私達の道標として発展し続けていただきたいと思います。本セミナーが患者会との初コラボという事で記念すべき第一回がGISTであったことも何かのご縁かと思います。

 午前の部は患者さんやご家族の体験談を聞き、参加者全員で自らの治療についても考える時間を設けました。

お一人目は、娘さんとしてGISTと闘うお父様を支え続けるご家族の立場からお話頂きました。お父様は定年後に声楽の道を志し、奥様を亡くされてからもその道を歩み続け、二度の手術を乗り越え、今もステージに立っておられます。そんなお父様の病状の把握から声楽家としての体調管理までを気遣い、支えて来られた娘さんです。通院にも付き添い、主治医とも信頼関係を築いてこられました。どのようなご苦労があったのか、どのように主治医とも関係を築いてこられたのか、参加されていた患者家族の皆さんも真剣に聞き入っておられました。

 

 お二人目はGISTと診断された奥様を支え続けるご主人の立場からお話頂きました。奥様の罹患は2002年、イマチニブがまだ承認される前の事でした。イマチニブは当時アメリカ、ヨーロッパではすでにGIST治療薬として承認されており、国内のGIST患者さん達は個人輸入という方法で、この薬を手に入れていた時でした。その後奥様は副作用と折り合いをつけながら10年以上服用を続けて来られました。そんな折にご主人も突然のGIST診断を受け、現在はご夫婦共にGISTと闘っておられます。ご家族として、そして患者ご本人としての体験談には、会場の皆さんも驚かれた事と思いますが、GISTという稀少がんにご夫婦それぞれが支え合いながら立ち向かう、その姿勢に学ぶべき点は多かったのではないでしょうか。

 

午前の部が終わり、食事休憩の時間を利用してのランチョンセミナーでは、国立がん研究センター・がん対策情報センター長、若尾文彦先生の「がん情報の探し方~正しい情報を見分けるために~」を視聴しながら、世の中に溢れている信頼できない情報をいかにして見分ければ良いか、情報の特性をよく考え、上手に利用していくにはどうすれば良いのか、を学びました。

インターネット検索では広告が上部に表示される事や、藁をも掴もうとする患者心理につけこむ悪質な宣伝には十分注意が必要な事、古い知識や狭い視野でがん医療を語り、最新の医療を否定することで利を得ている医師などについては、実名を挙げて注意を呼びかけてくださいました。患者会としての立場では、この手の情報は肯定も否定もできないものが多く、理路整然とご説明くださった若尾先生のご講演は、非常に貴重なお話でした。


午後の部では、まず国立がん研究センター中央病院 病院長の西田俊朗先生より、「GISTの基本的な知識、診断治療の物語」と題したご講演がありました。中でも西田先生と研究グループがいかにしてGISTの起源を探り当てたのか、その「科学」がどのような経過をたどり「医学」となり、お薬となり、今日の「医療」へ発展を遂げたのか、というお話は、効果の高い新薬を待ち望む私達には、大変興味深いお話でした。当日のアンケートでもこの点に触れたものが多く「お薬への考え方が変わった」「もっと大切に服用します」とのご意見も見られました。プレシジョン医療、個別化医療が叫ばれる今日ですが、資本主義の世界では統計学的に優位な結果が出なければ、例え一部の患者さんに効果があろうとも、お薬として世に出て来ることはありません。その事を改めて考えさせられ、では患者の側として何ができるのか、今後の新薬はどのような方法で試され、世に出されるべきなのか、参加された皆さんと一緒に考える、とても良い機会となりました。

続いて国立がん研究センター中央病院、先端医療科・消化管内科の岩佐悟先生より、お薬が世に出るための大切な試験である「治験」とGIST診療には欠かせない「治療薬」についてご講演頂きました。様々な臨床研究の中で「治験」とは他の「臨床試験」とどのように違うのか、臨床研究の種類とそれぞれの意義についてのお話。そしてGIST治療薬のそれぞれの特徴や、アジュバント治療について、データを示しながらのご解説には「大変解りやすく、理解が進んだ」というご意見も多く寄せられていました。西田先生のお話に続き、なぜ治験が必要なのか、なぜ統計学的な優位性が必要なのかも理解できる、大変素晴らしいご講演でした。

三人目には国立がん研究センター東病院で、医療ソーシャルワーカーとして、日々、患者さんやご家族のご相談に対応してくださっている坂本はと恵様より、「治験と費用負担」についてご講演いただきました。3つのGIST治療薬それぞれの服用に際しての負担額、また治験参加時の患者負担について、高額療養費、限度額認定証の利用方法についてなど、経済的な負担を減らすための制度利用についても、詳細にご説明くださいました。

 GISTは全てが同じ症状ではなく、お薬の効果や副作用にも個人差があります。そして患者さん達にもそれぞれの生活と事情があり、治療に専念したくてもできない、そんな時もあるでしょう。ですから本当にしんどい時に使える制度がある、相談できる窓口があるという事が私達にとっていかに心強い事か。治療や薬の事と同じくらい重要な知識ではないかと感じました。「病院で、家族のこと・お金のこと・介護のことを言葉にすることは、当たり前の時代になりました。病院や地域の中にある、支援資源を上手に活用して、治療と生活を両立してください。」そんな坂本さんのメッセージを、私達も多くの患者さんやご家族に伝えていきたいと思います。



今回のセミナーには「繋がれ、希望 未来へと」というサブタイトルを付けさせて頂きましたが、各演者の皆様のご講演から、確かな希望を感じ取る事ができました。

これを未来へ繋ぐためにも、私達患者側からの思いをぜひ参加された皆さんと共有したいと思い、最後にもうお一人、GIST治療歴18年の患者さんから、未来への思いを語っていただきました。

奥様、お嬢様も重い病気と闘っておられ、ご自身も稀少がんであるGISTに罹患されました。これでもかと襲い掛かる現実に対しても、辛い時こそ笑おうじゃないか!と笑顔で話されました。オストメイトとなられてからも治験薬2剤を含む、計5剤の薬の効果により、現在も仕事も趣味もアクティブにこなしておられます。治療の方は承認薬3剤を終えた後に治験薬のフェーズ2に参加され、その効果が薄れてからも再び承認薬の2周目の服用により、腫瘍の縮小が続いています。「奇跡は起きるものではなく、起こすもの」患者力をつけ、ご自分の答えを医師と一緒に探し出していこう、エビデンスがないなら自分達でエビデンスを作ろう、最後にそう締めくくられたお話に、会場から惜しみない拍手が送られていました。

 

最後にNPO法人GISTERS理事長より、ご挨拶させていただきました。

今現在、治療法の事やお薬の副作用の事などで悩まれている方も多いと思います。今回のセミナーではそのようなお話が少なく、皆さんが求めている答えは見つからなかったかもしれません。ですが間もなく第4期のガイドライン改訂も始まります。治療法についても多くの知見が集められ、より良い内容に常に進化していきます。副作用への対処法についても同様です。経験豊富な医師へセカンド等でご相談ください。治療法の選択、副作用の軽減については然るべき病院・医師へ相談する事が肝要です。そしてその答えは皆さん一人一人で違っているはずです。セミナーで学んだ事をベースに、ご自分のただ一つの答えは、是非、医師と皆さんとの話し合いの中で、見つけていただきたいと思います。

もう一点、今回のセミナーを通して皆さんへお伝えしたかったのは、新薬の開発に関しても、もっと積極的に考えていただきたいという事です。以前とは違い、各々の遺伝子変異の箇所によって、治療薬が変わる時代が目前まで来ています。ただ、それには今あるお薬だけでは十分とは言えません。

少数の患者さんにしか効かない薬剤であっても、薬として世に出る事ができるようにしなければ選択肢は増えていきません。ですから治験への参加が重要になってくるのです。

治験への参加は、新薬の開発を進めるためだけではありません。皆さんにとっても、その後の治療に良い影響を与える可能性があります。今回のセミナーでも、その事が十分ご理解いただけたのではないかと思います。標準治療後の治験参加は治療の一つの選択肢となっています。主治医、専門医とよく話し合っていただき、他の選択肢とも合わせて、ご検討いただければと思います。

 

 今回の東京以降、各地のセミナーで集められた皆さんの声を公開していきます。未来へ繋がる希望、そんなイメージのお薬とはどのようなものですか?今服用されているお薬とその研究・開発を続けて来られた方々へメッセージを送りませんか?

 

次は10月7日、札幌での開催が決まりました。各地での企画も進行中です。

 

ぜひ思いを一つにして未来を作って行きましょう。

 

最後になりましたが、本セミナー開催へご尽力くださった、国立がん研究センター中央病院、および、同東病院の先生方、職員の皆様、そして当日お手伝い下さったスタッフの皆様に、心より感謝申し上げます。

 

平成29年9月10日

NPO法人GISTERS

理事長 西舘 澄人